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ボイストレーナーとは?仕事内容・1日の流れ・やりがい|声より人の話を聞く仕事

8月21日
読了時間: 10分

更新日:9月8日

ピアノの前で子どもに歌を教えるボイストレーナー。ボイストレーナーの仕事内容をイメージした写真

結論:ボイストレーナーとは、発声の仕組みにもとづいて生徒の声の問題を診断し、改善の道筋を言葉で伝える専門職です。歌の上手さを評価する仕事ではありません。そしてレッスンの中で一番時間を使っているのは、実は声を出していない時間です。


この記事でわかること

  • ボイストレーナーの具体的な仕事内容

  • 1レッスンの流れと、1日の過ごし方

  • やりがいと、あまり語られない大変さ

  • 向いている人の傾向

  • 未経験から始めるときの現実的な入口




ウタ子「ボイストレーナーって、ずっと声を聞いてるんですよね」




MASAYAH「聞いてますけど、たぶん想像の半分くらいです」




ウタ子「半分。じゃあ残りは何をしてるんですか」




MASAYAH「話を聞いてます。今日は仕事の何が忙しかったとか、子どもの頃どんな家だったとか」




ウタ子「歌、関係なくないですか」




MASAYAH「それが一番関係あるんですよ。今日はそこの話をします」




ボイストレーナーとは


ボイストレーナーとは、発声の仕組みを理論と実技の両面から指導し、生徒が自分の声をコントロールできるようになるまでを支える専門職である。歌唱力の高さそのものではなく、声の変化に気づき、その原因を言葉にして伝える力が求められる。


もう少しかみ砕くと、やっていることは診断と処方に近いです。声を聞いて「今どこが詰まっているのか」を特定し、その人に効く練習を選んで渡す。上手いか下手かの判定は、この仕事にはほとんど出てきません。


仕事内容|声を直す前に、その人を聞いています


結論:仕事の中身は、カウンセリング・発声チェック・エクササイズの指導・フィードバック・カリキュラム作成の5つです。このうち最初のカウンセリングが、レッスン全体の出来を決めます。


僕は自分のことを、ボイストレーナーであると同時にボーカルカウンセラーだと思っています。15年前から意図的にそうしてきました。何をしているかというと、質問攻めです。


どんな家庭で育ったか。歌を人前で歌ってどう言われたか。学生時代に恥をかいた経験はあるか。いま仕事で何にストレスを感じているか。声が出ない理由の何割かは、喉ではなく本人のブレーキ側にあるからです。


「大きい声を出すな」と言われて育った人は、大人になってもそこで無意識に止まります。喉の使い方だけ直しても、そのブレーキは外れません。だから先に、その人の中に何がしまわれているかを一緒に見に行きます。




ウタ子「そこまで踏み込んで、嫌がられないんですか」




MASAYAH「たまに引かれます。でも、話し終わると声が変わるんですよ。だいたい」




ウタ子「先に心をほぐしてるんですね」




MASAYAH「ほぐしてるというか、本人が忘れてた蓋を一緒に見つけてる感じです」




そのうえで、実際に歌ってもらって声の状態を見ます。僕が見ているのは音程の正確さではなく、抑揚・跳ね・伸ばし・感情表現のダイナミクスです。ここが平坦な人は、技術がないのではなく表現の引き出しが少ないだけ、ということがよくあります。


そして最後に、次回までの宿題と、生徒ごとのカリキュラムを組み直します。教材づくりや練習メニューの設計は、レッスン時間の外にある仕事です。


1レッスンの流れ


結論:1レッスンは45分から60分程度。カウンセリング、発声チェック、エクササイズ、フィードバックの順に進みます。ここで必ず渡すのは、知識ではなく「体感」です。


流れそのものはシンプルです。前回からの変化を聞き、少し歌ってもらい、その日の課題に合った練習をして、変化を振り返って帰す。順番はほぼ変わりません。


ただ、レッスンの質を分けているのは順番ではありません。その45分の中で「確かに楽になった」「確かにさっきより高い声が出た」という感覚を、本人の体に一度でも通せたかどうかです。


課題の指摘だけで終わったレッスンは、生徒からすると「へえ」で終わります。理屈は分かったけれど、自分の声は何も変わっていないからです。逆に体感が一度でも通ると、その人は家に帰ってからも自分で練習します。指摘は記憶に残りませんが、体感は残るんです。


もうひとつ、意外に思われるのが進む量です。細かく見ていくと、1回のレッスンで歌詞3行しか進まないことも普通にあります。それが悪いわけではありません。ただし全員にそれをやると置いていかれる人が出るので、相手のレベルと目的に合わせて解像度のほうを調整します。


生徒が続くかどうかは才能ではなくレッスンの設計で決まる、という話はこちらに詳しく書きました。



1日の流れ|レッスン以外の時間のほうが長い


結論:個人で活動する場合、1日のうちレッスンに使う時間は半分もありません。残りは準備・記録・発信・事務です。


レッスンとレッスンの間には、前の生徒のメモを残し、次の生徒の課題を確認する時間が要ります。加えて、教材の更新、体験レッスンの対応、日程調整、請求、そして集客のための発信。


ここは正直に書いておきます。「歌を教える仕事」だと思って始めると、事務と発信の量に驚きます。教える時間だけをして生きていけるのは、生徒が安定して埋まってからの話です。


逆に言うと、この裏側の時間をどう組むかがそのまま働き方の自由度になります。オンライン中心にするのか、対面を軸にするのか、週末だけにするのか。設計しだいで、かなり自由がきく仕事でもあります。


やりがい|自分が上手くしたわけではない、という感覚


結論:やりがいは、生徒の声が変わる瞬間に立ち会えることです。ただしその変化は、こちらが与えたものではありません。


これは15年やってきて、はっきりそう思っています。教えたからといって、生徒が上手くなるわけではありません。生徒が勝手に上手くなるのであって、こちらはその手助けをしているだけです。


謙遜で言っているのではなく、実感としてそうなんです。同じことを同じように伝えても、伸びる人と伸びない人がいる。伸びた人は、こちらが渡したものを自分で持ち帰って、自分の生活の中で回した人です。


だからこの仕事の喜びは、「自分が変えた」ではなく「変わるところに立ち会えた」に近い。主役は最後まで生徒のほうだと思えるかどうかは、この仕事を長く続けられるかどうかにけっこう直結します。


大変さ|あまり語られない、立場の話


結論:一番の落とし穴は、辞められるのが怖くなって、生徒にお願いする態度になってしまうことです。


技術的な難しさより、こちらのほうが多くの人がつまずきます。生徒が減ると収入が減る。だから辞められたくない。すると、伝えるべきことを伝えなくなり、言い方がどんどん柔らかくなり、最後には「来てください」というトーンになっていきます。


そうなると不思議なもので、生徒のほうも離れていきます。これは技術の問題ではなく、立場の問題です。教える側が立場を明け渡した瞬間に、レッスンは指導ではなくサービスの提供になってしまうからです。


もうひとつの大変さは、成果がすぐに見えないことです。数回で変わる人もいれば、何ヶ月も同じ課題に向き合う人もいます。この地味な積み重ねを面白がれるかどうかが、続く人とそうでない人の分かれ目になっている印象があります。


向いている人|歌が上手いことは条件に入りません


結論:必要なのは歌唱力ではなく、人の声の小さな変化に気づき、それを言葉にできることです。


自分の感覚だけで教えることもできなくはありません。ただ、生徒から「なぜそうなるんですか」と聞かれた瞬間に止まります。感覚で歌えてしまった人ほど、実は教えるのが難しいというのは、この仕事のよくある逆転現象です。


逆に、自分が苦労してできるようになった人は、どこでつまずくかを体で知っています。あなたが過去に「高い声が出なくて悩んだ」「音程が取れなくて恥ずかしかった」経験を持っているなら、それは弱点ではなく指導者としての在庫です。



そして始め方については、独学で感覚を頼りに教え始めるより、発声理論を体系立てて学んでからのほうが遠回りになりません。資格が必要かどうか迷っている方は、こちらもどうぞ。



🤔 よくある誤解Q&A


Q. ボイストレーナーは、歌を聴いて評価するのが仕事ですか?


A. 違います。評価ではなく、原因の特定と、改善方法を言葉で渡すことが仕事の中心です。


Q. 1レッスンで劇的に声が変わるものですか?


A. 変わる人もいますが個人差が大きいです。ただし「さっきより楽」という体感は、毎回渡すべきものだと考えています。


Q. 歌が上手くないとボイストレーナーにはなれませんか?


A. なれます。歌唱力より、声の変化に気づいて言葉にする力のほうが仕事の中心です。


Q. レッスン中はずっと声を出しているのですか?


A. いいえ。話を聞いている時間がかなりの割合を占めます。声が出ない原因が本人の心理側にあることが多いためです。


❓ よくある質問(FAQ)


Q1. ボイストレーナーとはどんな仕事ですか?


A. 発声の仕組みにもとづいて生徒の声の問題を診断し、改善の道筋を言葉で伝える専門職です。歌の上手さを評価する仕事ではありません。


Q2. 1レッスンはどのくらいの時間ですか?


A. 一般的には45分から60分程度です。カウンセリング、発声チェック、エクササイズ、フィードバックの順に進みます。


Q3. レッスン以外にどんな仕事がありますか?


A. 生徒ごとのカリキュラム作成、レッスン記録、教材の更新、日程調整や請求などの事務、そして集客のための発信です。個人で活動する場合、これらがレッスンと同じかそれ以上の時間を占めます。


Q4. ボイストレーナーの仕事で一番大変なことは何ですか?


A. 生徒に辞められる不安から、こちらがお願いする態度になってしまうことです。技術の問題ではなく立場の問題で、ここを崩すと指導が成立しなくなります。


Q5. ボイストレーナーになるにはどこから始めればいいですか?


A. 発声理論を体系立てて学べる講座や資格から始めるのが遠回りになりにくいです。独学の場合、知識は集まっても「伝わる言葉」を鍛える機会がないまま止まりがちです。


✏️ まとめ:声を診て、言葉で渡す仕事


ボイストレーナーの仕事は、歌の採点ではありません。その人の声に何が起きているかを見極めて、変わるための道筋を言葉にして渡すこと。そしてレッスンの前半は、たいてい声ではなく話を聞く時間に使われます。


やりがいは、変化の瞬間に立ち会えること。大変さは、成果がすぐに見えないことと、立場を保ち続けることです。もしこの中身を読んで「地味だけど面白そう」と思えたなら、その感覚はかなり向いていると思います。




ウタ子「思ってたよりずっと、人と向き合う仕事なんですね」




MASAYAH「声って結局その人そのものなので、そこだけ切り離せないんですよ」




ウタ子「いい話っぽく締めましたね」




MASAYAH「たまには締めさせてください」




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今日もどこかで、あなたの歌がちょっと良くなりますように。


歌で世界を一つに MASAYAH(手書き署名)

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著者:MASAYAH


明治大学経営学部国際経営学科卒。ニューヨークとロサンゼルスでボイストレーニングを受けながら、日米のメジャーアーティストの制作に関わる。新宿にラニーボーカルスクール東京を創設しこれまで約3,000人をボイトレ指導。テレビやYouTubeなどメディアにも多数出演。

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