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音大卒業後の進路にボイストレーナーという選択肢|就活期に知っておきたい道

8月19日
読了時間: 9分

更新日:9月11日

空に投げられた卒業式の角帽。音大卒業後の進路を考える学生をイメージした写真

結論:音大卒業後の進路に、ボイストレーナーという道があります。理論の土台があるぶん有利なのは事実です。ただし理論を学んできた人ほど、教える現場で最初につまずくポイントがはっきりしています。そこを先に知っておくと、遠回りしません。


この記事でわかること

  • 音大の進路案内にボイストレーナーが出てこない理由

  • 理論を持っている人ほどハマる落とし穴

  • クラシックの発声はポップスでそのまま使えない、という具体的な話

  • 楽譜もコードも読めないまま指導を続けてきた私の話

  • 就活と並行して準備できること




ウタ子「音楽を専攻したのに、音楽と関係ない会社を受けてるんです」




MASAYAH「よく聞く話です。演奏か、一般企業か、の二択になりがちですよね」




ウタ子「そのあいだって、ないんですか」




MASAYAH「あります。教える仕事です。ただ、進路説明ではまず出てこないと思います」




ウタ子「なんでですか」




MASAYAH「学校で扱っているジャンルと、教える相手のジャンルがずれているからです」




音大の進路案内に「ボイストレーナー」が出てこない理由


結論:ボイストレーナーが対象にするのはポップスやロックを歌う人が中心で、クラシックを軸にしたカリキュラムからは、進路として案内されにくい位置にあります。知られていないだけで、道が閉じているわけではありません。


音大の卒業後といえば、オーケストラや吹奏楽団などの演奏活動、ピアノや声楽の講師、あるいは音楽と関係のない一般企業への就職が中心になりがちです。この並びの中に「歌う人を教える仕事」はなかなか出てきません。


でも実際のところ、発声の基礎理論は声楽で学んできた内容とかなり重なります。呼吸、共鳴、声帯の使い方。土台は同じで、扱うジャンルと言葉遣いが違うだけです。ゼロから始める人と比べれば、スタート地点はずっと前にあります。


理論を持っている人ほどハマる落とし穴


結論:音大で学んだ理論は間違いなく武器です。ただし、教える現場でその武器を最初に抜くと、たいてい失敗します。


いちばん多いのがこれです。説明から入ってしまう。


生徒の多くは楽譜もコードも読めない状態で歌っています。そこへ「共鳴腔が」「軟口蓋を」と正しい説明を丁寧にすると、相手の顔から表情が消えていきます。しかも困ったことに、説明している側は「ちゃんと教えられている」と感じてしまう。ここが厄介なところです。


私がレッスンでよく言うのは、説明だけで終わるレッスンは「YouTubeで十分」になるということです。無料で見られる解説はいくらでもあります。わざわざ人に習う価値は、実際にやらせて、その場で直せることのほうにあります。


だから順番を逆にします。

  • ① やってみせる:先に音で示す。言葉より速いです

  • ② 一緒にやる:横で同じことをやってもらう。ここで生徒の体が何をしているか見えます

  • ③ そのあとで説明する:体感が先にあると、専門用語がすっと入ります


「説明 → やらせる」ではなく、「やってみせる → 一緒にやる → 説明」。順番を入れ替えるだけで、同じ知識でも伝わり方が変わります。理論を持っている人ほど、この順番を意識したほうがいいと思っています。


自分に向いているかどうかが気になる方は、こちらもどうぞ。





ウタ子「説明しちゃダメって、けっこうショックです」




MASAYAH「ダメじゃないです。順番が最後ってだけで」




ウタ子「先に音でやって見せる、ですね」




MASAYAH「はい。それができる人は、音大で4年やってきたぶん強いです」




クラシックの発声は、ポップスでそのままは使えません


結論:ジャンルが違っても発声の土台は共通しています。ただしそのまま持ち込むと逆効果になる場面が、はっきり存在します。


具体的な例をひとつ。高音域の響かせ方です。


クラシック系の発声では、声を後ろに引いて深く響かせる作り方をよくします。これはこれで完成された技術です。ところがポップスで同じことをすると、声がこもって聞こえます。マイクを通す前提の音楽なので、深く奥に置いた響きは前に出てきません。


うちで「フクロウ」と呼んでいる練習では逆に、前方に集めて鳴らします。すると声がこもらず、しかも作り物ではなく自分の声のまま綺麗に響く。同じ「高い声を出す」でも、置きどころが違うわけです。


こういう差は、理論として知っていても体で切り替えるまでには少し時間がかかります。逆に言えば、そこさえ翻訳できれば、音大で積んだ土台はほぼ全部使えます。捨てる必要はまったくありません。


楽譜もコードも読めない私が、教えている話


結論:専門知識の量と指導力は、思っているほど比例しません。


ここは自分の話をさせてください。


私は楽譜が読めません。コードも分かりません。ボイストレーナーの資格講座で講師をしていて、これまで15年・約3,000人を教えてきて、それでも読めないままです。書いていて我ながらどうかと思いますが、事実なので仕方ありません。


それで成立しているのは、指導力を決めているのが専門知識の量ではないからです。効いているのは、相手が今どこで詰まっているかに気づく力と、それを相手に届く言葉に置き換える力。この2つだけです。


資格講座の最終試験でも、私が見ているのは完璧さではありません。全体像を掴んでいるか。そして目の前の人の悩みに合わせて、渡すトレーニングを選べるか。知識を全部並べられる人より、相手を見て1つ選べる人のほうを合格にしています。


だから音大で学んできた方に伝えたいのは、その知識はそのまま出すのではなく、翻訳して渡すものだということです。翻訳の練習さえすれば、土台の厚さは確実に効いてきます。


就活と並行して準備できること


結論:面接対策をしている時期に、発声理論を「人に伝える言葉」として学び直す準備を並行して始められます。


やること

  • 発声の基礎を、専門用語なしで説明し直してみる:声楽で習ったことを、楽譜を読めない人向けに言い換える。紙に書くと、自分がどこを分かっていないかも見えます

  • 身近な人に一度教えてみる:伝わらなかった箇所をメモしておく。この記録が、そのまま自分の教材になります

  • オンラインで学び直せる環境を選ぶ:卒業と同時に動き出せるよう、就活と並行できる形にしておくと無理がありません


なお、始めるタイミングに年齢は関係ありません。この記事とは読者層が違いますが、踏み出すかどうかで迷っている方には、こちらの考え方も参考になると思います。



反対に、音大出身でなくてもボイストレーナーになれるのか気になる方には、こちらの記事もあわせてどうぞ。



そして、教えることは演奏を諦めることではありません。人に教えると自分の演奏の解像度が上がる仕組みについては、こちらで詳しく書いています。



🤔 よくある誤解Q&A


Q. 音大出身でないとボイストレーナーにはなれない?


A. いいえ。私自身が音大出身ではありませんし、楽譜も読めません。学歴は必須条件ではありません。


Q. 音大出身なら教えるのも得意なはず?


A. 別の技術です。むしろ理論を持っている人ほど「説明から入る」癖が出やすく、そこが最初の壁になります。


Q. クラシック専攻だとポップス系は教えられない?


A. 土台は共通です。ただし高音の響かせ方など、そのまま持ち込むと逆効果になる場面があるので翻訳が要ります。


Q. 就活の時期に資格の勉強を始めるのは遅い?


A. 遅くありません。卒業と同時に動き出せるよう、面接対策と並行して準備する人は珍しくありません。


Q. 教える仕事に就くと演奏活動は諦めることになる?


A. なりません。多くの方が演奏と指導を並行していますし、教えることが演奏の質を上げるきっかけにもなります。


❓ よくある質問(FAQ)


Q1. 音大卒業後、ボイストレーナーになるにはどんな準備が必要ですか?


A. 演奏の専門知識に加えて、発声理論を「人に伝える言葉」として学び直す準備が必要です。専門用語を使わずに説明し直す練習から始めるのが効果的です。


Q2. 音楽理論を専門的に学んだことは有利になりますか?


A. 有利です。発声の基礎理論は声楽で学ぶ内容と重なる部分が多く、土台がある状態から始められます。ただし専門用語をそのまま使わない翻訳の力が別途必要になります。


Q3. 音大出身者が教える現場で最初につまずくのはどこですか?


A. 説明から入ってしまうことです。「やってみせる→一緒にやる→説明」の順に変えるだけで、伝わり方が大きく変わります。


Q4. クラシック以外のジャンルを教えることはできますか?


A. できます。ただし高音を後ろに引いて深く響かせるクラシック的な作り方は、ポップスではこもって聞こえます。前方に集める作り方への翻訳が必要です。


Q5. 就活と同時に資格取得を目指すのは現実的ですか?


A. 現実的です。オンラインで学べる講座もあり、面接対策と並行して準備し、卒業と同時にスタートしている方もいます。


Q6. 演奏家としてのキャリアと両立できますか?


A. 両立できます。教えることで自分の演奏の癖や無意識の動きに気づけるため、演奏の質を高めるきっかけにもなります。


✏️ まとめ:教えるという選択肢は、演奏を辞めることではない


音大卒業後の進路としてボイストレーナーはまだあまり知られていませんが、演奏の専門知識を土台にできる、かなり現実的な道です。


気をつけるのは1点だけ。知識は、そのまま出すのではなく翻訳して渡すものだということ。やってみせて、一緒にやって、最後に説明する。この順番さえ守れば、音大で積んだ4年間はほぼ全部が武器になります。


楽譜も読めない人間が15年やってこられたのだから、あなたの土台なら、もっと遠くまで行けるはずです。




ウタ子「音大に行った意味あるかな、って思ってたんですけど」




MASAYAH「ありますよ。翻訳する元がある人と、ない人の差は大きいので」




全体像から確認したい方は、まずこちらから読んでみてください。



これまで15年・約3,000人を教えてきたMASAYAHのラニーボーカルスクール東京が認定する、ラニーシンガーズアカデミー(LSA)では、発声理論から指導の言語化までをオンラインで学べます。いま学んでいることをどう翻訳すればいいのか、無料の個別相談で一緒に整理できます。



今日もどこかで、あなたの歌がちょっと良くなりますように。

歌で世界を一つに MASAYAH(手書き署名)

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著者:MASAYAH


明治大学経営学部国際経営学科卒。ニューヨークとロサンゼルスでボイストレーニングを受けながら、日米のメジャーアーティストの制作に関わる。新宿にラニーボーカルスクール東京を創設しこれまで約3,000人をボイトレ指導。テレビやYouTubeなどメディアにも多数出演。

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