生徒の歌を聴いて何がわかる?ボイストレーナーの「診断する耳」の育て方

結論:ボイストレーナーは生徒の歌を聴きながら、「声の出どころ」「喉の状態」「表現の有無」の3点を見ています。さらに、本人の自己認識と実際の声とのズレを見抜くことが、正しい課題設定の出発点です。診断する耳は、着眼点を決めて聴く練習を重ねることで後から育てられます。
この記事でわかること
ボイストレーナーが歌を聴いて判断していること
課題を見つける3つの着眼点
本人の思い込みと実態のズレを見抜く方法
診断する耳を育てる練習のやり方
ウタ子「先生って、ちょっと歌聴いただけで『ここが課題ですね』とか言うじゃん。あれ何見てんの?😑」
MASAYAH「何って、全部だよ。僕の耳、高性能だから😏」
ウタ子「はい出た。そういうのいいから、中身教えて」
MASAYAH「冗談冗談。実は見るところ、ほぼ決まってるんだよ」
ウタ子「決まってる? センスじゃなくて?」
MASAYAH「センスに見えるけど、型がある。だから練習すれば誰でも育つ耳なんだよ」
ボイストレーナーが歌を聴いて判断していること
結論:歌を聴くときに判断しているのは「今どこでつまずいているか」と「最初に何から手をつけるべきか」の2つです。上手い・下手の評価ではありません。
診断というと、点数をつけるようなイメージを持つ人もいるかもしれません。でも指導者が知りたいのは、上手いか下手かではなく、この人が気持ちよく歌えない原因はどこにあるのか、です。原因が分かれば、最初に手をつける練習が決まります。
診断の入り方にもコツがあります。僕は体験レッスンで、「全体的な状態を知りたいのか、なぜ歌えないのか原因を知りたいのか」を本人に選んでもらうことがあります。求めているものに合わせて聴き方を変えるだけで、伝わるフィードバックがぐっと変わります。
課題を見つける3つの着眼点
結論:初めて聴く生徒の歌は、「口先だけの発声になっていないか」「喉が閉まっていないか」「棒読みになっていないか」の3点から見ると、課題の大部分が整理できます。
着眼点 | 聴こえ方のサイン | 主な原因 |
口先だけの発声 | 声が薄く、響きが前でしか鳴っていない | 喉の奥や体の響きが使えていない |
喉の閉まり癖 | 高音で苦しそう、声が硬く詰まる | 力みで喉が締まっている |
棒読みの歌い方 | 音程は合っているのに、抑揚がない | 歌詞や気持ちに意識が向いていない |
この3点は、体験レッスンで僕がよく使う課題の整理の型です。一度にすべてを直そうとせず、どれが一番大きな課題かを見極めて、そこから手をつけます。
技術の前に、もっと手前の課題が見えることもあります。声量も技術も悪くないのに、全部を力で成立させていて余裕がない。こういう場合は、技術指導より先に「力みすぎ」と「開放感のなさ」を伝えるほうが、生徒は一気に楽になります。
ウタ子「3つに分けるだけで、だいぶ聴きやすくなるね😮」
MASAYAH「でしょ。いきなり全部聴こうとするから、何も聴こえなくなるんだよ」
ウタ子「でもさ、生徒が『私は声が低いんです』とか言ってきたら、それ信じちゃいそう」
MASAYAH「そこが落とし穴🎓 本人の言うことと、実際の声がズレてることはよくある」
ウタ子「本人が言ってるのに?😲」
MASAYAH「本人だからこそ、自分の声は聴こえてないんだよ。次でちゃんと話すね」
本人の思い込みと実態のズレを見抜く
結論:生徒が自己申告する悩みと、実際の課題が一致しているとは限りません。まず本人の話を受け止めたうえで、実際の声で確かめることが大切です。
あるレッスンで、「自分は声が低いので高い歌が歌えない」と話す生徒さんがいました。実際に音域を確認してみると、地声と裏声が切り替わるあたりの音は、ごく平均的な高さでした。課題は音域の狭さではなく、高音に入ったときの不安定さだったんです。
もし「声が低い」という自己申告をそのまま信じていたら、低い曲ばかりを勧めて、本当の課題には一度も触れられなかったかもしれません。診断する耳とは、本人の言葉を否定することではなく、言葉の奥にある本当の困りごとを、声で確かめる力のことです。
歌には、その人の普段の様子も表れます。頑張り屋さんは歌でも頑張りすぎるし、優しい人は声も控えめになりやすい。技術の課題と一緒に、その人らしさも聴いてあげると、伝え方の選び方まで変わってきます。
診断する耳を育てる練習のやり方
結論:着眼点を決めて聴き、聴いたことを言葉にして、実際に練習を当てはめて確かめる。このサイクルを繰り返すと、診断する耳は確実に育ちます。
ステップ1|着眼点を一つに絞って聴く
好きな歌手の音源や、家族・友人の歌を、「喉の閉まり」だけを意識して聴く
慣れたら「口先だけの発声」「棒読み」と、着眼点を一つずつ変える
ステップ2|聴いたことを一言で書き出す
「サビの高音で喉が締まっている」のように、場所と状態を一言でメモする
言葉にできない部分は、まだ聴けていない部分だと考える
ステップ3|本人の自己申告と照らし合わせる
歌う前に「どこが苦手だと思うか」を聞いておく
自分が聴き取った課題と比べて、一致しているか、ズレているかを確認する
ステップ4|練習を当てはめて結果を確かめる
見立てた課題に合う練習を一つだけ試してもらい、声が変わったかを聴く
変わらなければ見立てを修正する。この往復が耳を鍛える
聴き取ったことを相手に伝える力は、言語化の練習で伸ばせます。
見つけた課題をどの順番で伝えるかは、こちらで詳しく扱っています。
🤔 よくある誤解Q&A
Q. 生徒の課題を見抜けるのは、特別に耳がいい人だけ?
A. いいえ。着眼点を決めて聴き、言葉にして確かめる練習を重ねれば、診断する耳は後から育てられます。
Q. 生徒が自分で言っている悩みが、そのまま課題になる?
A. いいえ。本人の自己認識と実際の声がズレていることはよくあります。実際の声で確かめることが大切です。
Q. 診断では、見つけた課題を全部伝えたほうがいい?
A. いいえ。一番大きな課題を一つ選び、そこから手をつけるほうが、生徒は変化を実感しやすくなります。
❓ よくある質問(FAQ)
Q1. ボイストレーナーは生徒の歌のどこを聴いていますか?
A. 声の出どころ、喉の状態、表現の有無の3点を中心に聴いています。具体的には、口先だけの発声、喉の閉まり癖、棒読みの歌い方がないかを確認します。
Q2. 生徒の課題を見抜く力は、どうすれば身につきますか?
A. 着眼点を一つに絞って聴く、聴いたことを一言で書き出す、練習を当てはめて結果を確かめる、というサイクルを繰り返すことで身につきます。
Q3. 生徒の自己申告と、聴き取った課題が違う場合はどうすればいいですか?
A. 本人の話を否定せずに受け止めたうえで、実際の声で確かめた結果をやさしく伝えてください。本当の困りごとが見つかる大切なきっかけになります。
Q4. 診断のときに技術以外で見るべきことはありますか?
A. 力みすぎや余裕のなさ、その人らしさも見ておくと役立ちます。技術の前に心身の緊張をほどくことで、一気に歌いやすくなる場合があります。
✏️ まとめ:診断する耳は、型と練習で育つ
ボイストレーナーの耳はセンスだけでできているわけではありません。3つの着眼点で聴き、本人の言葉と実際の声を照らし合わせ、練習を当てはめて確かめる。この繰り返しで、生徒の本当の困りごとを見抜く耳は、誰でも少しずつ育てていけます。
聴く力は、教える側に立つことで自分の歌にも返ってきます。
ウタ子「耳って育てられるんだ。ちょっと希望湧いたかも😳」
MASAYAH「育つよ。君、ツッコミの精度高いし、たぶん耳もいい」
ウタ子「それ褒めてる? ツッコミと耳、関係ある?😒」
MASAYAH「ある。相手の話のズレに気づく力だから。立派な診断力だよ」
ウタ子「…まあ、そう言われると悪い気はしないけど」
MASAYAH「でしょ。期待してるよ🔥」
ボイストレーナーとして生徒の声を聴く力を、体系的に身につけたい方へ。資格や学び方も含めて、あなたに合った最短ルートを一緒に考えられます。
今日もどこかで、あなたの歌がちょっと良くなりますように。

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著者:MASAYAH
明治大学経営学部国際経営学科卒。ニューヨークとロサンゼルスでボイストレーニングを受けながら、日米のメジャーアーティストの制作に関わる。新宿にラニーボーカルスクール東京を創設しこれまで約3,000人をボイトレ指導。テレビやYouTubeなどメディアにも多数出演。


