ボイストレーナー資格 録音・セルフチェック完全ガイド|スマホ設定と改善サイクル
更新日:9月8日

結論:歌っている最中の自分の声は、どうやっても客観的には聞こえません。だから録音が要ります。機材はスマホのボイスメモで十分で、大事なのは毎回同じ条件で録ることと、必ず聴き返すことの2つだけです。
この記事でわかること
なぜ録音しないと自分の歌が分からないのか
スマホで十分に使える録音の条件(環境・距離・音量)
毎回同じ基準で見るための6項目の採点表
録る→診る→直す→録る、の回し方
録音でいちばんやりがちな失敗
ウタ子「録音、いつも撮るだけ撮って聴き返さないまま終わります」
MASAYAH「一番多いパターンです。というか、聴き返さないなら録らなくても一緒なんですよ」
ウタ子「うっ。だって自分の声、聴くのイヤじゃないですか」
MASAYAH「イヤですよ。僕もいまだにイヤです」
ウタ子「え、15年やっててもですか」
MASAYAH「イヤなままやってます。慣れるものではなくて、必要だからやるものなので」
なぜ録音しないと自分の歌が分からないのか
結論:歌っている最中の自分の声は、骨伝導と外の音が混ざった「自分にしか聞こえない音」です。それは聴き手に届いている音とは別物なので、録音でしか本当の姿は確認できません。
これ、根性論ではなく構造の話です。歌っている本人の耳には、空気を伝わってくる声と、頭蓋骨を伝わってくる声が同時に届いています。だから自分では「よく響いた」と思っていても、外から聞くとまったく違うことが普通に起こります。
指導の現場でいちばん多いのが音程です。特にオクターブ跳躍のように音が大きく飛ぶところで、実際より低く着地する癖。本人はまったく気づいていないのに、録音を再生した瞬間に「あ、下がってる」と自分で言う。録音は指摘するための道具ではなく、本人が自分で気づくための道具なんですよ。
僕自身、レッスンで1時間かけても歌詞3行しか進まないことがあります。パズルのピースみたいに一言ずつこだわるからなんですが、それができるのは録って聴き直しているからです。感覚だけで進めていたら、3行に1時間かける意味がありません。
僕が変わったのは「1曲通し」をやめた日でした
結論:録音は、通しで録って落ち込むためのものではありません。ワンフレーズだけ録って、その場で聴き直す。これに変えると急に前に進みます。
ボイトレに通い始めた頃の僕は、先生に言われたとおりに発声練習をして、そのあと1曲通して歌う、というやり方をずっと続けていました。真面目にやっていたつもりですが、伸びている実感はまるでなかったです。
変えたのは、「なぜこの練習をするのか」「どこに注意して歌うのか」をはっきりさせて、ワンフレーズ歌っては録音して聴き直すというやり方に切り替えたときでした。そこから急に、自分が何をやっているのかが分かるようになりました。
ニューヨークにいた頃も同じです。週に1〜3回のレッスン以外は、ひたすら家で歌いたい曲を研究して、ワンフレーズ録って聴き込んでいました。機材は3,000円くらいの会議録音用マイクです。それで録ったデモをMySpaceに上げていたくらいなので、音質は本当にひどかったと思います。それでも、聴き返す回数のほうが効きました。
ウタ子「3,000円のマイクでいいんですか?」
MASAYAH「よくはないです笑 でも『いいマイクを買うまで録らない』のが一番よくないので」
スマホで十分。ただし条件は毎回そろえる
結論:スマホのボイスメモで問題ありません。大事なのは音質そのものより、環境・距離・音量を毎回同じにして、前回と比べられる状態を作ることです。
やること
エアコン・換気扇・窓を止めて、まず30秒だけ無音を録ってみる(そこに入るノイズが毎回のノイズ)
反響が気になるならカーテンの前に立つ、壁にクッションを立てかける
台所や玄関など、硬い面が多い場所は避ける
スマホは口から20〜30cm離し、口の真正面から少しずらす(息が直接当たると吹かれます)
大きく歌う部分で試し録りして、音が割れない範囲に収める(-12〜-6dBが目安)
距離を毎回そろえるために、机や床に印を置く
「口の真正面から少しずらす」だけは、知らないと必ずやります。息が直接マイクに当たると、その部分だけボフッと潰れて、肝心の一番歌いたいところが聴けなくなります。
なおセルフチェック用の20〜30cmと、作品として録るときの距離は別物です。コンデンサーマイクで本気の宅録をするときは口から3〜5cmまで近づけます。「マイクは近づけたほうがいい」という話だけを持ち帰って、スマホでも3cmで録ってしまうと息のノイズだらけになるので、そこは分けて覚えてください。機材そのものの選び方は別記事にまとめてあります。
録音でいちばんやりがちな失敗は「返しの音」です
結論:ヘッドホンやイヤホンから返ってくる自分の声が大きすぎると、自分の声量が分からなくなって、無意識に力んで歌ってしまいます。
これは僕の失敗談です。初めてレコーディングブースに入ったとき、ヘッドホンから返ってくる音が大きくて、自分がどれくらいの声量で出しているのかがまったく分からなくなりました。結果、力みまくって、聴けたものではない歌になりました。後日リベンジしたので今は笑い話ですが、当時は本気で落ち込みました。
やること
返しの音量を下げる。自分の声が「少し物足りない」くらいが適正
イヤホンは両耳ではなく片耳にして、生の自分の声も聞こえる状態にする
録音した直後に「思ったより大きく歌っていないか」を必ず確認する
両耳をふさぐと、骨伝導の声と機械の声が二重に返ってきて、音量の判断ができなくなります。片耳を外すだけで直る人がかなりいます。これも0円です。
セルフチェックは6項目を毎回同じ基準で
結論:毎回違う観点で聴くと、良くなったのか悪くなったのかが分からなくなります。同じ6項目を各5点で採点して、点数の動きで見てください。

音程:半音以内のズレで最後まで通せているか
リズム:語尾がもたつく、走る、がないか
響き:鼻・口・胸のバランス。こもっていないか
息:足りているか、吸うタイミング、息漏れ
発音:母音が潰れていないか、子音が甘くないか
表現:強弱、ニュアンス、言葉の抑揚
合計30点満点です。そして採点したら、その週に直すのは最低点の1項目だけにしてください。3つも4つも同時に直そうとすると、どれも中途半端になって、結局どれが効いたのかも分からなくなります。
改善サイクルは「録る→診る→直す→録る」
結論:弱点を1つに絞って、10分のドリルを挟んで、同じフレーズをもう一度録る。この往復を1回やるだけで、変化は自分の耳で確認できます。
例えば高音が張ってしまう場合はこうです。
原因の仮説を立てる:息を押しすぎている、舌の付け根が力んでいる
10分のドリル:リップロール → 母音「う」 → 実際の歌詞、の順で戻す
すぐ録り直す:ドリルの直後に、同じフレーズを同じ条件で録る
並べて聴く:直前のテイクと比べる。ここで初めて「変わった」が事実になる
言葉にして残す:うまくいったときの感覚をノートに書く。感覚は書かないと消えます
もう一つ、録り直しは日をまたがないほうがいいです。気圧・温度・体調で声の状態は毎日変わるので、日をまたぐと前回のテイクとつながらなくなります。録り直しは何回やってもかまいません。僕は昔、1曲に12時間連続でかけていたこともあります。回数ではなく、一区切りの中で終わらせることが大事です。
ファイルは日付・曲名・課題・テイク番号で名前を付けておくと、後から比べるのが一気に楽になります(例:2026-09-07_ハナミズキ_高音張る_T3.m4a)。
つまずきポイント
結論:最大の壁は機材でも設定でもなく、「自分の声を聴くのがイヤ」という気持ちです。
これは慣れる方向で解決しようとしないほうがいいです。僕も15年やっていますが、いまだに自分の声を聴くのは好きではありません。それでも聴くのは、聴かないと直せないからです。
コツがあるとすれば、通しで録らないこと。3分の自分の歌をフルで聴くのはしんどいですが、5〜10秒のワンフレーズなら耐えられます。しかも直すべき場所がはっきりしているので、聴く目的がある。目的のない再生がいちばんつらいんですよ。
🤔 よくある誤解Q&A
Q. スマホの録音では意味がないのではありませんか?
A. 意味はあります。環境と音量が整っていれば、セルフチェックには十分実用的です。それより回数のほうが効きます。
Q. 高いマイクを買わないと上達しませんか?
A. しません。録音で効くのは音質そのものではなく、前回と比べられることです。条件を固定するほうが先です。
Q. ノイズが完全には消えません。
A. 静かな環境とマイク位置で8割は解決します。残りは短く録って、気になる部分を切るだけで十分です。
Q. 自分の声が嫌いで聴き返せません。
A. とても多い悩みです。通しで聴かず、5〜10秒だけ、直す場所を決めてから聴いてください。

❓ よくある質問(FAQ)
Q1. スマホ録音はモノラルとステレオのどちらがいいですか?
A. どちらでも問題ありません。それより毎回同じ設定にすることを優先してください。後からパソコンとUSBマイクに移行する場合も、基準があると比較が楽になります。
Q2. 通しで録るのと、短く区切って録るのはどちらがいいですか?
A. 短く区切るほうが効率的です。難しい箇所を5〜10秒で切り出して練習し、最後に通しで確認する流れがおすすめです。
Q3. マイクは口からどれくらい離せばいいですか?
A. スマホでのセルフチェックなら20〜30cmです。コンデンサーマイクで作品として録る場合は3〜5cmまで近づけますが、用途が違うので混同しないでください。
Q4. 近所への音が気になって録音できません。
A. 小さな音量でできるドリル(リップロール・鼻母音)を平日に、実際の声での録音を週末に、と二層に分ける方法があります。時間帯の工夫も有効です。
Q5. 録音した後、何から直せばいいですか?
A. 6項目を採点して、最低点の1項目だけを直してください。同時に複数を直そうとすると、どれが効いたのか分からなくなります。
✏️ まとめ:録音は、いちばん正直なコーチです
自分の声は、歌っている最中には正しく聞こえません。これは耳の構造の問題なので、意識や才能ではどうにもなりません。だからこそ録音が効きます。
スマホで大丈夫です。環境・距離・音量を毎回そろえて、ワンフレーズ録って、すぐ聴き返す。弱点は1つに絞る。それだけで、来週の自分は今週より確実に分かっています。
ウタ子「今日から録れそうです。イヤですけど」
MASAYAH「イヤなままでいいです。イヤなのに録る人が伸びるので」
ウタ子「うまいこと言いますね」
MASAYAH「15年言い続けてます」
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今日もどこかで、あなたの歌がちょっと良くなりますように。

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著者:MASAYAH

明治大学経営学部国際経営学科卒。ニューヨークとロサンゼルスでボイストレーニングを受けながら、日米のメジャーアーティストの制作に関わる。新宿にラニーボーカルスクール東京を創設しこれまで約3,000人をボイトレ指導。テレビやYouTubeなどメディアにも多数出演。


