top of page

声量がない人のためのボイトレ|小さい声の原因は喉ではなく息

8月28日
読了時間: 9分

更新日:9月23日

オレンジ色の背景の前で、白Tシャツの若い男性が自分を指さし、笑顔で話している。

結論:声量がない原因のほとんどは、喉の力不足ではありません。ただ、ここで「腹圧を使いましょう」と言われても動きようがないと思います。だからこの記事では、腹圧と呼気圧を分けて定義するところから始めます。


この記事でわかること

  • 「腹圧を使って」で止まると、なぜ何も変わらないのか

  • 腹圧と呼気圧は別物だという話(ここが本題)

  • お腹に空気は入っていない、という誤解の整理

  • 今日からできる練習と、力の入れどころ

  • そもそも「大きい声」は音量ではないという話




ウタ子「声が小さいって昔から言われるんです。喉が弱いんでしょうか」




MASAYAH「喉はたぶん関係ないです。息の圧力のほうですね」




ウタ子「あー、腹圧ってやつですよね。よく聞きます」




MASAYAH「はい。……で、腹圧って結局どうやるか分かります?」




ウタ子「お腹に力を入れる、ですか?」




MASAYAH「そこが今日いちばん直したいところです。力は入れません」




「腹圧を使って」で止まると、何も変わりません


結論:声量の解説で「腹圧を使いましょう」と書かれていることは多いのですが、その"やり方"が書かれていないと、読んだ人は動きようがありません。


これは自分への反省でもあります。うちの資格講座のテキストにも「腹圧と呼気圧を強めて響きを増大させていく」という一文があって、先日、受講生の方から質問が届きました。「具体的にどうすればいいのか分からない。それを説明している章はどこですか」と。


調べたら、この言葉が出てくる実技のページは前半にあるのに、説明しているコラムは全部後半にありました。相互参照もゼロ。つまり読んだ人は、意味の分からない言葉のまま練習していたことになります。教材はその後すぐ直しました。


同じことがブログでも起きます。「腹圧」と一言で片づけると、読者は「お腹に力を入れればいいのかな」と解釈して、だいたい逆方向に力みます。なのでここから、言葉の意味そのものを置き直します。


腹圧と呼気圧は、別物です


結論:ひとまとめに語られがちですが、腹圧と呼気圧は場所も役割も違います。分けて理解すると、やることが具体的になります。



定義

体感での言い換え

腹圧

息を吐こうとする力に対して、腹部や体幹が内側から圧を受けている状態

吸いこんだときのお腹の膨らみを、そのまま保つ

呼気圧

声門下にかかる、声帯を押し開こうとする空気の圧力

喉で息を止めて、漏らさないように声を出す


読み直してほしいのは右の列です。腹圧は「保つ」、呼気圧は「漏らさない」。どちらも「力を入れる」とは書いていません。ここが決定的です。


声帯は喉にある笛のようなものだと考えてください。フルートやリコーダーと同じで、強く吹けば大きな音が出るわけではありません。適切な圧力がかかったときにいちばんよく鳴る。喉を締めて押し出すのは、笛を無理やり吹き潰しているのと同じことです。


お腹に空気は入っていません


結論:「お腹に空気を入れる」という言い方が誤解のもとです。空気が入るのは肺の下部で、その結果としてお腹が膨らんでいるだけです。


この順番を取り違えると、お腹を膨らませること自体が目的になって、力み方を覚えてしまいます。正しくは、

  • 吸うときは、緩める。ここで力を入れると空気が入りません

  • 吸い終わったら一瞬止めて、お腹をパツンと張った状態にする。これが腹圧をかけた状態です

  • 声を出している間、その張りを保つ。押し出さない


イメージは浮き輪です。パンパンに膨らんだ浮き輪の栓を抜くと、押さなくても空気は勝手に出ていきます。声も同じで、張りさえ保てていれば、押し出す作業はいりません。「出そう」とした瞬間に喉が働き始めます。


もうひとつ、混同されやすいので分けておきます。よく聞くドッグブレスは「みぞおち」を使う練習で、腹圧で使う「下腹部」とは場所が違います。どちらも大事ですが、別の部位の話だと知っておくと練習が整理されます。




ウタ子「力を入れるんじゃなくて、膨らみを保つ。全然ちがいますね」




MASAYAH「まったく別です。力を入れると、その瞬間に喉が助けに来ちゃうので」




ウタ子「喉が親切すぎる」




MASAYAH「そうなんですよ。頼んでないのに来るんです」




今日からできる練習


結論:みぞおち周りで息を短く押し出す感覚をつかんでから、それを声に乗せる。この順番でやると、喉に戻りにくくなります。


やること

  • ① お腹に手を当てて「はっ」と短く息を吐く:みぞおちが瞬間的に動く感覚を確認します。空咳をしたときの動きと同じです

  • ② 同じ感覚のまま、短く声を出す:「はっ」の息の動きに声を乗せるだけ。喉ではなくお腹側が働いているかを、手で確かめながら

  • ③ 声量を3段階で出し分ける:小さい声・普通の声・大きい声を、喉の締め具合ではなくお腹の圧力の変化だけで出し分けます。これができると、音量が喉から切り離せます


数分あれば今日から試せます。②で喉に戻ってしまう人は、①に戻ってください。順番を守るほうが結局早いです。


喉の締まりが同時に気になっている方は、こちらもどうぞ。



そもそも「大きい声」は音量ではありません


結論:声量の悩みの正体は、たいてい音量ではなく響きの不足です。ボリュームを上げても、響きがなければ通りません。


ここは順番を疑ってほしいところです。「声が通らないから、もっと大きく出さなきゃ」と考えると、力んで押し出す方向に行きます。するとキンキンした硬い音になって、響きはむしろ消えます。大きいのに聞き取りにくい声、というのはこうして生まれます。


実際に効くのは逆の操作です。ボリュームを少し下げて、あくびをするように喉を開く。すると中低音の響きが出てきて、結果として遠くまで届く声になります。声量ではなく音圧、と言い換えてもいいかもしれません。


同じ理由で、空気の量も増やしすぎないでください。会話しているときと同じくらいのコンパクトな量で十分で、足りない分は共鳴で補います。息をたくさん使うほど大きくなる、というのは起きません。


高音側で細くなる悩みがある方は、こちらが対応する記事です。



練習でつまずくポイント


結論:腹圧は7割でキープ。パンパンまで入れないこと。そして「大きな声を出そう」という意識に戻った瞬間、喉に力が返ってきます。


つまずき方はだいたい2つです。


ひとつは、腹圧を目いっぱいまで入れようとして固めてしまうこと。歌っている間は7割くらいで保って、少し使ったらすぐ補充するのが実際の使い方です。パンパンだと逆に動けません。


もうひとつは、意識が「声を大きくする」に戻ること。練習中は「お腹の張りを保つ」という言葉に置き換えてください。鏡の前で肩と首を見ながらやると、力が戻った瞬間が自分で分かります。


なお、喉に痛みや違和感が続く場合は、無理に練習を続けないでください。耳鼻咽喉科への相談も選択肢です。喉を壊す前のチェックはこちらにまとめています。



大人になってからのボイトレ全体の進め方は、こちらが入口です。



🤔 よくある誤解Q&A


Q. 声量がないのは喉の筋力不足?


A. いいえ。ほとんどの場合、喉ではなく息の圧力の使い方が原因です。


Q. 腹圧って、お腹に力を入れることですよね?


A. 違います。吸ったときの膨らみを保つことです。力を入れると喉まで一緒に固まります。


Q. お腹に空気を入れるイメージで合っていますか?


A. 空気が入るのは肺の下部で、その結果お腹が膨らみます。順番が逆だと力み方を覚えてしまいます。


Q. 息をたくさん吸えば声は大きくなる?


A. なりません。量ではなく圧力と響きの問題です。会話と同じくらいの量で足ります。


Q. 大きな声を出そうと頑張れば声量は上がる?


A. 押し出すとキンキンした声になり、響きが消えてかえって通らなくなります。


❓ よくある質問(FAQ)


Q1. 声量がない原因は何ですか?


A. 多くの場合、喉の筋力ではなく息の圧力の使い方です。腹圧と呼気圧が働いていないと、喉を締めて音量を作ろうとしてしまいます。


Q2. 腹圧と呼気圧はどう違いますか?


A. 腹圧は、息を吐こうとする力に対して腹部や体幹が内側から圧を受けている状態です。呼気圧は、声門下にかかって声帯を押し開こうとする空気の圧力です。体感では「お腹の膨らみを保つのが腹圧」「喉で息を漏らさないのが呼気圧」と考えてください。


Q3. 腹圧はどのくらいの強さで保てばいいですか?


A. 歌っている間は7割程度でキープし、少し使ったらすぐ補充します。パンパンまで入れると固まって動けなくなります。


Q4. 今日からできる声量アップの練習はありますか?


A. お腹に手を当てて「はっ」と短く息を吐き、その感覚のまま声を乗せる練習です。慣れたら小さい声・普通・大きい声をお腹の圧力だけで出し分けます。


Q5. 練習してもすぐに声量が変わりません。なぜですか?


A. 声量は継続的な積み重ねで育つもので、一度の練習で劇的には変わりません。焦って押し出すと喉に戻ってしまいます。


Q6. 声が通らないのですが、もっと大きく出すべきですか?


A. 逆です。ボリュームを少し下げてあくびのように喉を開くと中低音の響きが出て、結果として通る声になります。


Q7. 喉に痛みがある場合はどうすればいいですか?


A. 無理に練習を続けず、耳鼻咽喉科への相談も検討してください。痛みは練習量ではなく使い方のサインであることが多いです。


✏️ まとめ:声量は「力」ではなく「保つ」で変わります


声量の悩みは、喉の力不足ではありませんでした。効くのは腹圧=吸ったときの膨らみを保つこと、呼気圧=息を漏らさずに声にすること。どちらも「力を入れる」ではなく「保つ」「漏らさない」という言葉で書かれている、というのがいちばん大事なところです。


そして大きい声の正体は音量ではなく響きです。押し出すのをやめて、喉を開いて、7割の張りを保つ。これだけで、去年の自分より確実に届く声になります。


「腹圧を使いましょう」で止まっている説明を、もう読まなくて済みますように。




ウタ子「力を抜く話ばっかりでしたね」




MASAYAH「声はだいたい、やめると出ます」




一人でやってみて「これ、合ってるのかな」となったら、無料体験レッスンで一度プロの耳を借りてみてください。お腹に手を当てて一緒に確認すれば、数分で分かります。



今日もどこかで、あなたの歌がちょっと良くなりますように。

歌で世界を一つに MASAYAH(手書き署名)

次に読む



著者:MASAYAH


明治大学経営学部国際経営学科卒。ニューヨークとロサンゼルスでボイストレーニングを受けながら、日米のメジャーアーティストの制作に関わる。新宿にラニーボーカルスクール東京を創設しこれまで約3,000人をボイトレ指導。テレビやYouTubeなどメディアにも多数出演。

bottom of page