裏声がスカスカになる原因|芯のある裏声を作る練習手順
更新日:4 日前

結論:裏声がスカスカなのは、失敗ではありません。それはファルセットという名前がついた、ちゃんとした裏声です。本当の問題は息が漏れていることではなく、漏れる量を自分で選べないことのほうにあります。
この記事でわかること
スカスカな裏声が「失敗」ではない理由
「もっと息を吐く」が逆効果になる仕組み
今の自分の声がどの段階にいるかを知る方法
息漏れの量を行き来して芯を作る、4段階の練習手順
うまくいかない人が必ずハマる2つのパターン
ウタ子「裏声を出すと、声というより息の音がするんです」
MASAYAH「それ、ちゃんと裏声が出てますよ」
ウタ子「出てます、で終わらせないでください」
MASAYAH「失礼しました。息漏れのある裏声には名前があるんです。ファルセットっていいます」
ウタ子「名前があるってことは、異常じゃないんですね」
MASAYAH「異常じゃないです。問題は、漏れない裏声に切り替える手が無いことのほうです」
スカスカな裏声は、失敗ではありません
結論:裏声には2種類あります。息が漏れる裏声がファルセット、息が漏れない裏声がヘッドボイスです。どちらも同じ「裏声」の中の違いにすぎず、スカスカな状態は片方に寄っているだけです。
ここを知らないと、自分の声が壊れているように感じてしまいます。実際には、あなたが出しているのはファルセットです。柔らかくて、弱々しくて、息の音が混ざる。そういう声として、ちゃんと存在している発声です。
そしてファルセット自体は悪者ではありません。曲の中で、そっと置きたい一節。息の気配ごと届けたいフレーズ。ああいう場面で効くのは、むしろこちらです。
目安として、地声のボリュームを10とするなら、裏声は3から5くらいに抑えたほうが自然につながります。裏声を地声と同じ強さで鳴らそうとすると、かえって不自然になる。だから小さいこと自体は、狙いどおりでもあるんです。
ただ、それしか出せないとなると話は変わります。曲の中でサビの高音を任せたいときや、最後まで芯を持たせたいときに、手札が1枚しかない状態になる。困っているのはたぶん、そこですよね。
「もっと息を吐く」が逆効果になる理由
結論:スカスカなときに息の量を増やすと、声帯はさらに開いて、息の音だけが増えます。足すべきは息ではありません。
これはよく聞くアドバイスですし、私も昔は素直に信じていました。声が細いなら、息を強く送ればいい。理屈としては分かる気がします。
でも実際には逆のことが起きます。息を強く送ると、多くの人は喉と体で押しにいきます。ファルセットは息を使いすぎると、結局その「押す」状態に戻ってしまうんです。柔らかく出したくて始めたはずなのに、力んで終わる。よくある道筋です。
うちでは声帯を笛にたとえて説明しています。強く吹きすぎると音になりません。弱すぎると安定しません。優しく吹いたときに、いちばん綺麗に鳴ります。 リコーダーを思い切り吹いたときのあの「ピー」を思い出してもらえれば早いです。あれは息が足りないのではなく、多すぎて音になっていない。
つまり必要なのは息の追加ではなく、息の量を自分で調整できるようになることです。ここから先は、その練習の話になります。
なお、裏声ではなく地声の高音が細くなる場合は、原因も対処もまったく別です。そちらはこちらにまとめています。
まず、今の自分がどこにいるかを知る
結論:練習に入る前に、自分の声が今どの段階にあるのかを自分で判別できるようにします。ここが曖昧なまま練習しても、良くなったのか分からないまま終わります。
レッスンでは、この3段階で聞き分けてもらっています。
① 息のみ:声になっていない。ため息に近い状態です
② 息混じりの声:音程はあるけれど、後ろに常に息の音がついている。多くの方がスカスカと感じているのはここです
③ しっかりした声:息の音がほとんど聞こえず、芯がある状態
スマホで録って、自分の裏声がどれに当たるか聞いてみてください。①なのか②なのかで、やることが変わります。①なら声帯がまったく寄っていないので、まず音程を作るところから。②なら寄ってはいるので、あとは量の調整です。
この判別を自分でできるようになると、練習の精度が一気に変わります。逆にここを飛ばすと、「なんとなく良くなった気がする」で終わってしまうんですよね。
ウタ子「録音するの、正直いやなんですけど」
MASAYAH「わかります。私も初めて聴いたときは他人だと思いました」
ウタ子「その言い方、ちょっと救われます」
MASAYAH「慣れます。3回目くらいから普通に聴けますよ」
芯のある裏声を作る4段階の練習手順
結論:息漏れをゼロにしようとしないでください。息漏れの量を4段階で行き来して、ひっくり返らずに響く「ちょうど良いところ」を自分で見つけるのが本手順です。
やり方はシンプルです。楽に出せる高さの音を1つ決めて、その同じ音を4回出します。
段階1|息漏れ強め:いつものスカスカな裏声のまま出します。これが自分の出発点です
段階2|少し強く:息の音を少しだけ減らします。音を大きくするのではなく、息の音だけを減らす感覚です
段階3|強く:さらに減らします。ここで芯が出てくる人が多いです
段階4|とても強く:限界まで減らします。たいていここで裏返るか、硬くなります
そして大事なのはここからです。4まで行ったら、また1に戻ります。 1→2→3→4→3→2→1と、何度も往復してください。
なぜかというと、強すぎても弱すぎても声は裏返るからです。その両側を実際に体験しておかないと、真ん中がどこか分かりません。片道だけ登って「これが正解です」と言われても、体は覚えないんですよね。両端を知って初めて、中間が見つかります。
もう一つ、母音で開閉を練習する方法もあります。「イ」で強く閉じる → 「エイ」で柔らかく → 「ア」でいちばんふわっと、息漏れ寸前まで。同じ高さのまま、この順で声を移していきます。段階の行き来を母音側から作る練習です。
どちらも1回3分程度で終わります。毎日少しずつのほうが、週末にまとめてやるより効きます。
やらないでほしいこと:いきなり高い音でやる。まずは楽に出る高さで、量の感覚だけ掴んでください
やらないでほしいこと:音量を上げて解決しようとする。この練習で動かすのは音量ではなく息漏れの量だけです
やらないでほしいこと:喉が乾いたり痛んだりしてからも続ける。その日はもう終わりにしてください
なお、この記事は裏声に絞った話です。地声も含めて声全体が息っぽい・かすれるという場合は、声帯の閉じ方そのものを鍛える別の手順があります。そちらはこちらにまとめました。
うまくいかない人がハマる2つのパターン
結論:裏声が出ない人はほとんどいません。ファルセットは、レッスンで取り組めばほぼ全員が出せるようになります。詰まっているときの原因は「締めすぎ」か「抜けすぎ」のどちらかです。
私がこれまでに出会った唯一の例外は、技術的に無理だったケースではなく、先にメンタルが折れてしまったケースでした。逆に言えば、続けさえすれば辿り着く場所だということです。ここは本当にそう思っています。
締めすぎパターン:芯を出そうとして、喉ごと締めにいっている状態。声は硬くなり、長く歌うと痛くなります。段階1に戻って、いったんスカスカを許してください。喉が締まる感覚が強い方は、カラオケで喉が締まる原因と直し方も合わせてどうぞ
抜けすぎパターン:柔らかく出そうとするあまり、息だけが増えている状態。段階3・4を意識的に多めに通してください
厄介なのは、この2つは自分では区別しづらいことです。どちらも「うまくいっていない」という同じ感覚で届くので。録音して、①②③のどれかを判定するところに戻るのがいちばん早い解決になります。
実は私自身、高い声は曲の最初だけにしてあとはキーを下げる、危なくなったら裏声に逃げる、という歌い方が長いあいだ定着していました。そして「自分は高音が出ない人間なんだ」と思い込んでいました。逃げ道として使っている裏声は、いつまでもスカスカのままなんですよね。逃げ道ではなく、選んで使う裏声に変わった瞬間から、景色が変わります。
🤔 よくある誤解Q&A
Q. 裏声がスカスカなのは声帯が弱いから?
A. 違います。息が漏れる裏声はファルセットという正常な発声です。弱いのではなく、息漏れの量を調整する手を持っていないだけです。
Q. もっと息を吐けば芯のある裏声になる?
A. なりません。息を増やすと声帯はさらに開き、押す発声に戻ってしまいます。増やすのではなく調整できるようにするのが先です。
Q. ファルセットは使わないほうがいい?
A. そんなことはありません。柔らかく置きたいフレーズでは主役になります。地声を10とすると裏声は3から5程度が自然で、小さいこと自体は狙いどおりです。
Q. 裏声が出ない人もいる?
A. ほとんどいません。レッスンで取り組めばほぼ全員が出せるようになります。詰まる原因は締めすぎか抜けすぎのどちらかです。
Q. 毎日たくさん練習したほうが早く直る?
A. 量より頻度です。1回3分程度を毎日続けるほうが、週末にまとめてやるより体が覚えます。
❓ よくある質問(FAQ)
Q1. 裏声がスカスカになる原因は何ですか?
A. 息が漏れる裏声(ファルセット)で歌っているためです。これ自体は正常な発声で、問題は息漏れの量を自分で調整できないことにあります。
Q2. ファルセットとヘッドボイスの違いは何ですか?
A. 息が漏れる裏声がファルセット、息が漏れない裏声がヘッドボイスです。どちらも同じ裏声の中の違いで、優劣ではありません。
Q3. 芯のある裏声を作るにはどんな練習をすればいいですか?
A. 楽に出せる高さで同じ音を出しながら、息漏れの量を「強め・少し強く・強く・とても強く」の4段階で行き来します。往復することで、ひっくり返らない中間点が分かるようになります。
Q4. 練習してもスカスカのままなのはなぜですか?
A. 締めすぎているか、抜けすぎているかのどちらかです。まず録音して、自分の声が「息のみ」「息混じりの声」「しっかりした声」のどれかを判定してください。
Q5. 1日どれくらい練習すればいいですか?
A. 1回3分程度で十分です。高い音からではなく、楽に出せる高さで息漏れの量の感覚を掴むことを優先してください。
Q6. 裏声の練習で喉が痛くなるのは普通ですか?
A. 普通ではありません。芯を出そうとして喉ごと締めているサインなので、いったん息漏れの多い段階に戻してください。痛みがある日はそこで終わりにします。
✏️ まとめ:スカスカを直すのではなく、量を選べるようになる
裏声がスカスカなのは、失敗ではありませんでした。それはファルセットという正常な裏声で、曲の中では武器にもなります。
変えたいのは状態ではなく、選べるかどうかです。息漏れの多い側と少ない側を4段階で往復して、両端を知る。そうすると真ん中が見つかります。
高い声を裏声で逃げていた頃の自分に、いちばん言ってやりたいのがこの話です。逃げ道は、練習すれば手札になります。
ウタ子「今日から往復してみます」
MASAYAH「はい。ただし楽な高さから。いきなりサビでやらないでくださいね」
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今日もどこかで、あなたの歌がちょっと良くなりますように。

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著者:MASAYAH
明治大学経営学部国際経営学科卒。ニューヨークとロサンゼルスでボイストレーニングを受けながら、日米のメジャーアーティストの制作に関わる。新宿にラニーボーカルスクール東京を創設しこれまで約3,000人をボイトレ指導。テレビやYouTubeなどメディアにも多数出演。


